BtoB企業からのAI動画ツール選定相談が、2026年に入って急増しています。市場規模が2026年に8億4,700万ドルに達する見通しで、Fortune 100企業の70%以上がすでにSynthesiaを導入している状況です。選択肢が一気に増えたぶん、「どれを選べばいいかわからない」という声も比例して増えています。
グローバル製品と国内製品では、機能・価格・サポート品質に大きなばらつきがあります。用途を無視してツールを選ぶと、後から「日本語サポートがない」「研修LMSに連携できない」という問題が出てきます。
本記事では、一次ソース確認済みの8ツールを料金・日本語対応・BtoB用途・導入難易度の4軸で中立視点から整理します。どのツールが自社の状況に合うか、末尾の用途別選定ガイドを参考に判断してください。
複数社のAI動画導入を支援する立場で、私がいつも感じるのは「比較記事を読んでも決められない」という担当者の迷いです。理由は明確で、多くの比較記事がツールのスペック表を並べるだけで、「自社がどの軸で選ぶべきか」の整理をしていないからです。
営業部門で多言語展開を優先するのか、研修部門でPowerPoint連携の手軽さを優先するのか。この出発点が違えば、同じ「AI動画ツール」でも正解が180度変わります。
なぜ今、BtoB企業がAI動画ツールを選び直しているのか
市場規模と採用速度が示す現実
生成AI動画ツール市場は2026年に8億4,700万ドル規模に達する見通しで、2034年まで年率18.80%のCAGRで成長が続く予測です。大企業セグメントが2026年市場シェアの50.86%を占めるという数字が示すように、個人クリエイター向けツールからBtoBの業務インフラへと重心が移っています。
Synthesiaは2025年4月にARR1億ドルを突破し、Fortune 100企業の70%以上が顧客になったと発表しました。HeyGenも2025年10月にARR1億ドルを達成し、企業顧客数は8万5,000社以上に拡大しています。2026年1月にSynthesiaはシリーズEで2億ドルを調達し、企業評価額は40億ドルに達しました。
ツール乱立時代に何で選ぶか
2026年時点で主要ツールだけで数十種類が存在します。カテゴリは大きく3種類に分かれます。
- AIアバター系: 人物が話す動画を自動生成(Synthesia・HeyGen・PIP-Maker・DeepBrain AI・AvaMo)
- テキスト→映像変換系: ブログ記事やスクリプトから映像を自動組み立て(Pictory AI・VideoBRAIN)
- アニメーション・ホワイトボード系: 説明動画・カートゥーン動画を量産(Steve AI)
BtoB用途では「誰が話す動画か」「何言語で展開するか」「既存のPowerPointや資料と連携できるか」が選定の核心です。
本記事の選定基準と8ツールの全体像
選定の4条件
本記事が取り上げる8ツールは、以下の条件をすべて満たしています。
1. 公式サイトで料金情報が確認可能(または問い合わせ先が明確)
2. BtoB用途での導入実績または機能訴求が公式に確認できる
3. 日本語対応の有無が公式情報から判断できる
4. 2026年4月時点でサービスが継続中
なお、リサーチ時点でアクセス不可だった2ndVOICE(2ndvoice.jp)とPicon(picon.fm)は、一次ソース確認ができなかったため本記事の比較対象から除外しています。
グローバル系5ツールと日本系3ツールの位置づけ
グローバル系(Synthesia・HeyGen・Steve AI・Pictory AI・DeepBrain AI)は価格・機能の多様性が強みで、英語UIが標準です。日本系(PIP-Maker・VideoBRAIN・AvaMo)は日本語サポートと国内事例が充実していますが、グローバル展開には制限があります。どちらが優れているというわけではなく、自社の用途と運用体制が選定基準の出発点です。
8ツール比較一覧(図版参照)
figure-01 の比較マトリクスで各ツールの位置づけを確認してください。以下では、選定の4軸の読み方を補足します。
最安プランの比較: グローバル系はDeepBrain AI($24/月)・Pictory Starter($25/月)・HeyGen Creator($29/月)・Synthesia Starter($29/月)・Steve AI Basic($10/月)と比較的低価格から始められます。国内系はAvaMo(¥4,980/月〜)が最安値で、PIP-Maker(¥49,800/月〜)・VideoBRAIN(要見積もり)は法人契約前提の価格帯です。
日本語対応の深さ: UI・音声・サポートのすべてが日本語対応しているのはPIP-Maker・VideoBRAIN・AvaMoの3ツールのみです。SynthesiaとHeyGenは160〜175言語の音声対応ですが、UIは英語のみです。
各ツール個別解説
Synthesia — 企業研修・オンボーディングのグローバルスタンダード
160言語以上に対応し、AIアバター数は最大240体以上(Enterpriseプラン)。SCORMファイル出力によるLMS連携が標準機能に含まれており、eラーニングとの親和性が業界でトップクラスです。
料金は4プラン構成です。無料(Basic)では動画10分/月・アバター9体の制限付き。Starter($29/月)で125体以上のアバターが使え、Creator($89/月)からAPIアクセスが加わります。Enterpriseは動画無制限・カスタムアバター無制限で要見積もりです。
BtoB事例: Zoomは研修動画の制作時間を90%短縮し、担当者1人で6か月に200本以上のマイクロ動画を制作しました。DuPontは動画1本あたりの外注費を約1万ドル削減し、制作速度を80%向上させています。
日本語音声は160言語の1つとして対応していますが、ネイティブレベルの自然さには達していないとの口コミが複数あります。UIも英語のみで、社内展開時に担当者の習熟コストが発生します。
HeyGen — 多言語リップシンクと動画翻訳に強い急成長ツール
175言語以上に対応し、40言語以上でリップシンク(口パク同期)が可能です。既存の動画を別言語に翻訳・吹き替えする「Video Translation」機能は、グローバル展開している企業に特に評価されています。
料金は5プラン構成。Free($0・月3本・透かしあり)からCreator($29/月・月30分・1080p)・Pro($99/月・4K)・Business($149/月・チームコラボ・デジタルツイン5体)の順で機能が拡張します。EnterpriseはSCIM対応・動画無制限で要見積もりです。
BtoB事例: BtoB SaaSスタートアップのPyne AIは、HeyGen APIを活用した製品デモ動画でCVR(コンバージョン率)が2.3倍、エンゲージメント完了率が競合比10倍に向上しました。
2026年1月以降のBusinessプランは価格が大幅改定されています。料金改定が頻繁なため、見積もり前に必ず公式サイトの最新情報を確認することをお勧めします。SCORMなどのLMS連携はEnterpriseのみの対応です。
Steve AI — ホワイトボード動画・アニメ動画を低コストで量産
リアルなAIアバターよりも、説明動画・チュートリアル動画のアニメーション化を得意とするツールです。料金体系は5プランで、Basic($10/月・年払い)から始められる手軽さが特徴です。Pro($40/月・年払い)から2K出力、Enterpriseで6,000分/月の大量制作が可能です。
BtoB用途では、製品説明・採用・オンボーディングのアニメーション動画制作に向いています。AIアバターを使ったリアルな人物登場型の動画を求める用途には不向きで、その場合はSynthesiaやHeyGenの検討が現実的です。日本語UIは非対応で英語のみ。国内BtoBでの導入事例は公式に確認できていません。
Pictory AI — テキスト→動画変換の専門ツール
AIアバター機能は持ちません。テキスト(ブログ記事・台本・PDF)を入力すると、ストックメディア(GettyImages等1,200万点以上)から画像・映像を自動選択し、ナレーション付き動画を生成する仕組みです。
料金は4プラン。Starter($25/月・年払い)で月200分・ブランドキット1個。Professional($35/月・年払い)で月600分・ブランドキット5個。Team($119/月・年払い)は3名以上のチーム利用向けで月1,800分。2026年にはPowerPoint→インタラクティブ動画変換機能も追加されています。
L&D(人材育成)部門でのコンテンツ量産や、マーケ部門でのブログ記事の動画転用に強みがあります。日本語UIは未対応で英語のみのため、日本語コンテンツでの利用は精度に注意が必要です。
DeepBrain AI(AI Studios) — 対話型AIアバターとアジア向けリアルアバターの専門
対話できるインタラクティブアバター(バーチャル受付・キオスク用途)機能が充実しており、他ツールとの明確な差別化点です。アジア系・日本人アバターのリアリティが高く、日本語音声も比較的自然に近い仕上がりです。
料金は4プラン。Free($0・月3本)からPersonal($24/月・動画無制限・150言語)まで、月$24から本格利用が可能です。Team($55/席/月)から4K出力・カスタムアバター5体に対応。インタラクティブアバタープランは別途Standard($99/月〜)となります。
日本国内のBtoB導入事例は公式に掲載されておらず、サポートも英語中心です。国内の本格展開を検討する場合は、この点を事前に確認することをお勧めします。
PIP-Maker — 国内法人向け研修・動画マニュアルのデファクトスタンダード
PowerPointをアップロードするだけで最短5分でAIアバター動画が生成できる仕組みが、国内BtoB導入が進んでいる最大の理由です。65言語以上に対応し、IP制限・ID認証など国内法人向けのセキュリティ設計が施されています。
料金はスタンダードプラス(税込¥54,780/月〜・動画枠5枠)から始まり、上位プランは要問い合わせ。グローバル系ツールと比較すると価格は高めですが、日本語UIと国内サポート体制、そして豊富な導入事例がその差を説明しています。
BtoB事例3選:
- 株式会社ネットセーブ: 研修担当者の年間労働時間が2,844時間→804時間(約72%削減)、研修コストが455万円→128万円(約70%削減)
- 大林組: 新規入場者教育の年間工数を1万6,000時間以上削減(毎日発生する入場者教育をPIP-Maker動画で省力化)
- トヨタパーソナルサポート: 動画制作工数が体感で約90%削減、更新が従来2〜3日から即日に短縮
国内法人限定のサービスのため、海外拠点での利用は対象外です。スタンダードプラスは動画枠5枠という制限があり、大量制作には上位プランへの移行が必要です。研修・動画マニュアル領域での国内活用事例は、AIアバターで研修動画を内製化する方法でもまとめています。
VideoBRAIN — 国内最大級のテンプレートと素材数を持つ動画制作プラットフォーム
3,500以上のテンプレートと1,000万点以上のストックメディア(画像・映像・BGM)を持ち、会社説明・採用・SNS動画の内製化を支援する定額制プラットフォームです。動画本数無制限の定額モデルが、量産ニーズのある企業に支持されています。
公式ページでは「5年連続シェアNo.1 AIビジネス動画編集クラウド」と標榜していますが、根拠となる調査機関・レポート名は公式サイト上で開示されていません(同社公式ページの記載より)。料金は全プラン見積もり制で非公開のため、詳細は公式への問い合わせが必要です。
BtoB事例: 霧島酒造は製造ラインの手順書動画を100本超制作し、独り立ちまでの教育期間が「大幅短縮」と報告しています(具体的な期間は非開示)。500〜600種の手順書の動画化計画が進行中です。
AIアバター機能は、SynthesiaやPIP-Makerと比較すると弱い位置づけです。動画内に人物を登場させる用途よりも、映像素材とテキスト・ナレーションを組み合わせる用途に向いています。
AvaMo — Tencent Cloud技術基盤の日本市場特化型新興ツール
日本人・アジア系アバターのリアリティを重視した設計で、縦型動画(TikTok / Instagram Reels / YouTube Shorts)への対応が他ツールと異なるポイントです。日本語・英語・中国語・韓国語を含む数十言語に対応しており、2025年5月にサービスを開始しています。
料金は4プラン。Free(¥0・動画3分/月)からStarter(¥4,980/月・動画10分/月)、Pro(¥22,000/月・動画45分/月)、Enterprise(¥100,000/月〜・動画300分以上)の段階構成です。Pro(¥22,000/月)は日本製AIアバター系ツールの中では最安値水準に位置します。
同社は制作コスト・時間を「最大98%削減」と訴求していますが、この数字はベンダー自社試算です。30秒動画の外注費約12万円・12時間をAvaMoで制作した場合の約2,400円・15分との比較であり、自社の制作条件や品質基準によって実際の効果は異なります。2025年5月のサービス開始から1年未満のため、BtoBの具体的な導入事例は現時点では公式に未掲載です。
用途別選定ガイド
figure-02 の用途別選定マップを起点に、以下の条件分岐で候補を絞ってください。
研修・eラーニング(国内法人): 国内事例・日本語サポート・セキュリティ設計の観点から、PIP-Makerが第一候補です。テンプレートと素材の量産性を優先するならVideoBRAINも選択肢に入ります。
研修・eラーニング(グローバル企業): 多言語LMS連携とSCORM出力を標準装備するSynthesiaが適しています。動画翻訳・吹き替えを重視するならHeyGenが補完的な選択肢です。
動画マニュアル・SOP: PowerPoint連携の手軽さと国内製造業の実績という観点から、PIP-MakerとVideoBRAINが有力です。SOP動画のローカライズ実践ガイドでは、現場への定着プロセスを詳しく解説しています。
営業動画・セールスイネーブルメント: 多言語翻訳と動画CVR改善事例の観点からHeyGenが有力です。Synthesiaも営業向け動画テンプレートを豊富に持っています。営業動画アプローチの実践ガイドも参照してください。
SNS広告・採用動画: 縦型動画対応と日本語アバター品質の観点からAvaMoが新興ながら有力候補です。HeyGenも多言語SNS動画での実績があります。
ブログ・テキスト→動画変換: テキストからの自動映像組み立てを最も得意とするPictory AIが適しています。
ホワイトボード・アニメ動画: 最安$10/月からアニメーション動画を量産できるSteve AIが専門特化の強みを持っています。
対話型AIアバター(キオスク・受付): インタラクティブアバター機能が専門的に充実しているDeepBrain AIが最有力です。
主要事例の数字
リサーチで確認した代表的な事例数字を整理します。いずれも一次ソース(各ツール公式ケーススタディ)で確認済みです。
- Synthesia × Zoom: 動画制作時間90%短縮、担当者1人で6か月に200本以上のマイクロ動画を単独制作
- Synthesia × DuPont: 動画1本あたりの外注費を約1万ドル削減、制作速度80%向上、120言語以上での多言語ローカライズを実現
- HeyGen × Pyne AI: 製品デモ動画のCVR(コンバージョン率)が2.3倍に向上、エンゲージメント完了率が競合比10倍
- PIP-Maker × ネットセーブ: 研修コストが455万円→128万円(約70%削減)、研修担当者の年間労働時間が2,844時間→804時間(72%削減)
- PIP-Maker × 大林組: 新規入場者教育の年間工数を1万6,000時間以上削減
- AvaMo(同社自社試算): 30秒動画の制作費用が約12万円→約2,400円(98%削減)、制作時間が12時間→15分(96%削減)
AvaMoの数値はベンダー自社試算であり、外注費との比較条件が前提になっている点に留意してください。他の5社はすべて公式ケーススタディに基づく導入企業の報告です。
選び方の4軸:判断フロー
軸1: 予算
月$30以下・¥5,000以下で試したい場合は、HeyGen Creator($29/月)・Pictory Starter($25/月)・DeepBrain Personal($24/月)・AvaMo Starter(¥4,980/月)が現実的な出発点です。月¥50,000以上の予算があり、日本語サポートが必須の法人ならPIP-Makerが本命になります。
軸2: 日本語対応の深さ
UI・音声・サポートのすべてを日本語で使いたいならPIP-Maker・VideoBRAIN・AvaMoの3択です。音声だけ日本語で十分であればHeyGenやDeepBrain AIも候補に入ります。SynthesiaはUI未日本語化のため、社内に英語対応できる担当者が必要です。
軸3: BtoB用途の一致
研修・マニュアル特化ならPIP-Makerが国内実績で突出しています。営業動画の多言語展開ならHeyGen、テキストからの動画量産ならPictory AI、アニメ・ホワイトボード型ならSteve AIが適しています。用途が複合する場合は、最も優先度の高い1用途に絞って選定するとブレません。
軸4: 導入のスピード
稟議なしで即日試せるツールはHeyGen・Synthesia(Starter)・Pictory AI・Steve AI・AvaMoです。初期設定や担当者教育に1〜2週間を要するのはVideoBRAIN(CSサポート型)とPIP-Maker(PowerPoint整備が前提)です。Enterpriseプランはいずれも商談と契約が必要になります。
選定支援をしていると、「とにかく全部比べてから決める」というアプローチが最も時間を消費することを実感しています。8ツールを横断的に比較検討していると、判断基準自体がブレてきて、3か月後にも結論が出ないケースがあります。
現場で機能する判断の進め方は、まず「何言語で・どんな動画を・月何本作るか」の3点を確定することです。この3点が決まれば、今回の比較軸から対象ツールは2〜3本に絞り込めます。絞り込んだ後に無料プランや試用期間で実際に触ってみて、UIの使い勝手と日本語出力の品質を確認するのが最速の選定プロセスです。
まとめ
BtoB AI動画ツールの市場は、2026年時点でグローバル系と国内系で役割が明確に分かれています。
グローバル系(Synthesia・HeyGen)は多言語・LMS連携・大量制作のインフラとして成熟し、Fortune 100企業レベルの採用実績が積み上がっています。日本系(PIP-Maker・VideoBRAIN・AvaMo)は国内法人の運用実態に最適化されており、日本語サポートと国内事例の豊富さで差別化しています。
市場はCAGR 18.80%(2026-2034年)で成長が続きます。ツールの機能と料金は毎四半期のように更新されるため、導入前に必ず公式サイトの最新情報を確認してください。
BtoB企業の動画活用がどのような成果を生んでいるかはAI生成動画のBtoB導入事例まとめで詳しく解説しています。
VideoNextでは、BtoB企業のAI動画ツール選定と導入後の運用設計を支援しています。「どのツールが自社に合うか」という相談から、「導入後にどう内製化を回すか」という運用フェーズまで、実際の企業支援で得た知見をもとに対応しています。
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