「動画生成AI」「AI動画」という言葉を、社内資料や商談で目にする機会が急に増えました。ただし、AIアバターやデジタルヒューマンとの違いを整理して使い分けている企業はまだ少数派です。この記事では、用語の整理から仕組み、2026年7月時点の主要モデル、BtoB5領域の実績、作り方2ルートまでを一本にまとめます。
日本企業の生成AI活用・推進度はすでに87%に達しています(出典: PwC Japan「生成AIに関する実態調査2026春」)。
一方、生成AIで画像・動画制作を経験した人のうち60.8%が「4回以上の修正」を必要としたと回答しています(出典: PRIZMA調査)。導入は進んでいても、運用の手間はまだ大きいというのが実態です。
結論|動画生成AIをBtoBで使うために押さえるべき3点
動画生成AIを検討するBtoB担当者が最初に押さえておきたい要点は3つです。
- 用語の整理: 動画生成AIは技術の最上位概念であり、AIアバターやデジタルヒューマンはその応用領域の一つです
- 2026年7月時点の勢力図: Soraはサービス終了が進行中で、Veo3.1・Kling3.0・Seedance2.5が主役に代わりつつあります
- 作り方の選び方: 月間の制作本数と社内エンジニアリソースの有無で、SaaS型かAPI・カスタム型かが決まります
背景として、市場全体も拡大局面にあります。国内動画制作サービス市場は2024年度に4,238億円(前年比106.2%)に達し、2027年度には5,400億円規模まで拡大する見通しです(出典: 矢野経済研究所プレスリリース転載)。これは動画生成AI特化ではなく、動画制作市場全体の数字です。
生成AI市場全体で見ても、国内は2028年に803億円規模(年平均成長率84.4%)へ拡大すると予測されています(出典: IDC Japan)。日本企業の生成AI導入率は57.7%に達しており(対象: CIOクラス517社、出典: NRI)、冒頭で触れたPwC Japanの87%(対象: 一般企業)とは調査対象が異なる点に留意が必要です。
動画生成AIに特化した数字で見ると、世界のAI動画生成市場は2025年に7億1,680万ドル規模で、2034年には33億5,000万ドル規模へ拡大すると予測されています(出典: Fortune Business Insights)。ここから、それぞれの要点を掘り下げます。
動画生成AIとは|AI動画・AIアバター・デジタルヒューマンとの違い
動画生成AIとは、テキストや画像、音声等の入力から、動きと時間軸を持つ映像そのものをAIが生成する技術です。生成方式は大きく2つに分かれます。
テキストから動画を作る「text-to-video」と、既存の画像を起点に動きを与える「image-to-video」です。この技術そのものが、本記事で扱う最上位の言葉になります。
AI動画・AIアバター・デジタルヒューマンとの関係
「AI動画」は、動画生成AIで作られた動画やAI技術で編集された動画全般を指す口語的な総称です。月間検索は74,000件と最大手ですが、実務上は動画生成AIとほぼ同義に使われています。
「AIアバター」は動画生成AIの応用形態の一つで、人が話す・案内する機能を重視した表現です。HeyGenやSynthesiaのようなSaaS型ツールが代表例に当たります。
「デジタルヒューマン(バーチャルヒューマン)」は、AIアバターの中でも外見のリアリティと双方向対話機能を重視したものを指します。2023年4月にNECが発起人となって設立したデジタルヒューマン協議会が、この呼称の普及を後押ししています(出典: NECプレスリリース2023年4月25日)。
なお、VideoNextの別記事ではデジタルヒューマンをAIアバター群の上位概念として整理しています。これは矛盾ではなく粒度の違いです。本記事は技術スタック全体を扱い、その記事はAIアバター活用の実務文脈でこの呼称がどう使われるかを扱っています。
動画生成AIの仕組み|テキストと画像から映像が生まれるプロセス
拡散モデルとTransformerの組み合わせ
動画生成AIの多くは、拡散モデル(Diffusion Model)という仕組みを土台にしています。大量の動画データに段階的にノイズを加え、完全にノイズだけの状態から元の動画を復元する訓練をAIに行わせる手法です。
動画・画像は「時空間パッチ」という共通の単位に変換され、文章生成AIでも使われるTransformerで処理されます。この組み合わせをDiffusion Transformerと呼びます(出典: OpenAI「Video generation models as world simulators」)。
生成の際は、テキストプロンプトや入力画像を条件として与えます。AIはノイズだらけの状態から、条件に合う映像を復元するようにパッチを予測して生成します。
text-to-videoとimage-to-videoの違い
テキストから動画を作る場合は、プロンプトの条件だけを頼りに映像全体を一から生成します。画像から動画を作る場合は、入力画像を最初のフレームとして固定し、そこから先の動きだけを生成します。
Google DeepMindのVeo3は、映像と音声を同時に拡散処理する仕組みを採用しています。動き・足音・口の動きと音声を同期させる技術的特徴です(出典: Google DeepMind Veo3モデルカード)。
音声合成の技術的な詳細は、以下の記事で深掘りしています。
image-to-video(画像から動画)の活用シーンと注意点は、以下の記事で詳しく解説しています。
2026年7月時点の主要モデル・ツール勢力図
動画生成AIの分野は月単位で状況が変わります。2026年7月時点で押さえておくべきモデル・ツールの現在地を整理します。
基盤モデル系|Sora終了とVeo・Runway・Kling・Luma・Pika・Seedanceの動き
OpenAIのSoraは、Web・アプリ版が2026年4月26日にすでに終了しています。API版も2026年9月24日に終了予定です(2026年3月24日発表)。運営コストが1日約100万ドル規模に達し、収益が見合わなかったことが理由とされています(出典: OpenAI公式ヘルプセンター)。
Google DeepMindのVeo3.1が現行の主力です。Google AIの有料プランで生成でき、全生成動画にSynthID電子透かしを自動付与しています(出典: Google DeepMind公式モデルページ)。Vertex AI経由のAPI提供もあります。
透かしとデータ管理の姿勢では、RunwayとKlingで対応が分かれます。RunwayはGen-4.5で最大1080p生成に対応し、生成コンテンツ全件にC2PA準拠の透かしを付与、Standard以上のプランで商用利用が可能です(出典: Runway公式料金ページ)。一方でKling AI(快手)は2026年2月に3.0を発表し、ネイティブ4K・60fps・最大15秒・マルチショットに対応していますが、中国企業製のため国際案件ではデータ保管場所の確認が必須です(出典: Kling AI公式)。
Luma Dream Machine(Ray2)はimage-to-videoに強みを持ち、10秒生成・1080p対応です(出典: Luma AI公式)。Pika2.2はPikaframesという機能で、開始・終了2枚の画像から中間動画を生成します(出典: Pika公式料金ページ)。
ByteDanceのSeedance2.5は2026年6月23日、Volcano Engine FORCEカンファレンスで発表されました。単一パスで30秒生成、ネイティブ4K対応という仕様です。ただし2026年7月執筆時点ではベータ段階で、グローバル向けの正式な一般提供日は未確定です。
Adobe Fireflyは、Adobe Stock等の商用安全な学習データのみを使用し、エンタープライズ向けの補償があります。全出力にContent Credentials(C2PA準拠)を自動付与しています(出典: Adobe公式ブログ)。最大秒数・解像度は非公開のため、導入時は個別の問い合わせが必要です。ここまでを見ると、透かしや来歴管理を標準搭載する動きが各社で共通していることが分かります。
アバター動画SaaS系|HeyGen・Synthesiaの導入実績
HeyGenは175言語以上に対応し、Photo Avatar 3.0という写真から会話動画を作る機能を持ちます。Creatorプラン(月額29ドル)以上で商用利用が可能です(出典: HeyGen公式料金ページ)。
Synthesiaは、Fortune 100の90%以上、60,000社以上が利用しています。SOC2 Type II、ISO42001、ISO27701を取得済みで、企業導入のセキュリティ要件に対応しています(出典: Synthesiaケーススタディ)。
国産の位置づけ|基盤モデルは海外勢、SaaS型は国内が強い
国内企業がSora・Veo・Runway・Kling・Luma・Pikaのような汎用text-to-video基盤モデルを商用提供している例は、現時点で確認できませんでした。
経済産業省・NEDOの「GENIAC」プロジェクトでは、株式会社AIdeaLabがアニメ・イラスト領域に特化した動画生成AI基盤モデルを開発中です(出典: 経済産業省GENIACプロジェクト)。AIdeaLabは既存グローバルモデル比で最大70%の性能向上を目指すとしています(出典: AIdeaLab GENIAC採択発表)。ただし第三者による性能検証はまだ確認できておらず、商用の汎用モデルではなく開発途上の位置づけです。
一方、国産で強みが表れているのは「アバター動画アセンブリ型SaaS」の領域です。代表例はPIP-MakerやVideoBRAINで、日本語品質・LMS連携・国内法人サポートに強みがあります。基盤モデルは海外勢が主導し、日本は活用レイヤーで力を発揮している構図です。
BtoB AI動画ツール比較8選(2026年版):Synthesia・HeyGen・PIP-Maker他
BtoB5領域での活用実績|一次ソースで見る効果
動画生成AIの効果は、抽象的な「時短」ではなく具体的な数字で確認できます。研修・営業・IR・動画マニュアルの4領域は、一次ソース付きの数字で見ていきます。ウェビナー領域の実測データは専門記事に譲ります。
研修・人材育成|工数削減が最も出やすい領域
コールセンター研修のネットセーブ社は、年間の研修担当者労働時間を2,844時間から804時間へ、72%削減しました。研修コストも455万円から128万円へ70%削減しています(出典: PIP-Maker導入事例)。
SaaS企業のForecast社は、コース制作時間を50%削減(1ヶ月から2週間へ)し、6ヶ月で100本以上を制作しました(出典: Synthesia Forecast事例)。
営業・マーケティング|CVR改善の実例
クラウドPBX「INNOVERA」を提供するプロディライト社は、TOPページへのAIアバター動画設置でCVRが359.8%改善しました。平均滞在時間も32.6%改善しています(出典: SiTest事例ページ)。
才流の調査では、日本企業のBtoBマーケター600名のうち65.7%が、生成AIの活用で外注費が削減されたと回答しています(出典: 才流)。
IR・動画マニュアル・ウェビナー|残る3領域の現在地
IRでは、グリーホールディングスが株主総会でブイキューブのAIアバター動画を採用し、役員の収録工数を約1/3に削減しました(出典: ブイキューブプレスリリース、2026年1月16日発表)。
動画マニュアルでは、多言語対応が数字に表れています。グローバル製造業のNovelis社はSynthesiaを導入し、1四半期で3,000本以上の動画を10言語で制作しました。現地化コストは約85%削減、制作時間は83%削減しています(出典: Synthesia Novelis事例)。具体的な工程は、こちらの記事で詳しく整理しています。
ウェビナー領域は、この記事では新規の数字を示しません。ウェビナー配信プラットフォームでの実測データは、専門記事に委ねます。
動画生成AIの作り方2ルート|SaaS型とAPI・カスタム型
動画生成AIを導入する際は、大きく2つのルートに分かれます。月間の制作本数とエンジニアリソースの有無で選び方が決まります。
- SaaS型(ノーコード): HeyGen・Synthesia・PIP-Maker・VideoBRAINなど。月額数千円から数万円で始められ、非エンジニアでも運用できます
- API・カスタム型: Runway API・Google Veo(Vertex AI)・Kling APIなど。開発工数はかかりますが、自社システムへの組み込みや大量自動生成が可能です
目安は明確です。月間の制作本数が数十本以内で、非エンジニアが運用するならSaaS型が現実的です。月間数百本以上を自動生成する、または既存システムに組み込みたいならAPI・カスタム型を検討します。
API・カスタム型の実例として、GMOペパボは商品画像1枚からLP動画を自動生成する「カラーミーモーション LP」を2025年10月に提供開始しました(出典: GMOインターネットグループ公式PR)。ECサイトの商品数が多い企業では、この自動生成パイプラインが有効です。
多くのBtoB企業は、まずSaaS型で始めて必要に応じてAPI・カスタム型へ移行しています。API面の移行パスも用意されており、Synthesiaが公式APIを提供しているほか、HeyGenにも同等のAPIがあります。
各ツールの詳しい比較と、自社に合う選び方は、以下の記事で整理しています。
導入前に知っておきたいリスクとガバナンス
著作権と学習データ
文化庁は2024年3月に「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめています。完全自動生成のコンテンツは著作権が認められない可能性が高く、人の創作的寄与があれば著作権が発生し得るという整理です(出典: 文化庁AI著作権見解)。
学習データの扱いはツールごとに異なります。Runwayは無料からUnlimitedプランまでユーザーの入出力を学習に利用し、Enterpriseプランのみ対象外です。機密性の高い素材を扱う場合は、契約前の確認が必要です。
EU AI法と透かし技術
EU AI法第50条(透明性義務)は2026年8月2日に新規システムへ施行されます。AI生成コンテンツへの機械可読マーキング等が義務化され、違反時の罰金は最大1,500万ユーロまたは全世界売上高の3%です(出典: EU AI Act公式)。
一方、EU AI法の「高リスクAIシステム分類ルール」は2027年12月まで延期の動きがあります。これは第50条の透明性義務とは別の条項であり、混同しないよう注意が必要です。
電子透かし技術も広がっています。Google DeepMindのSynthIDは1,000億件以上の画像・動画にすでに適用されています(2026年5月19日発表)。コンテンツ来歴管理の枠組みC2PAには約380社が参加しています。
詳細な実務対応と開示の3ステップは、次の記事で扱っています。
AI動画・AI音声に「開示」と「透かし」が要る時代 — EU AI法8/2施行とSynthIDで読む、日本BtoBの備え
まとめ|動画生成AIをBtoBでどう使い始めるか
動画生成AIは、技術としての最上位概念です。AIアバターやデジタルヒューマンはその応用領域であり、用語を整理してから検討すると意思決定が速くなります。
2026年7月時点でSoraは終了が進行中で、Veo3.1・Kling3.0・Seedance2.5が主役に代わりつつあります。国産はSaaS型の活用レイヤーで強みを発揮しています。
BtoB5領域の実績は、研修72%削減、営業CVR359.8%改善など具体的な数字で確認できます。作り方はSaaS型かAPI・カスタム型かを、制作本数とエンジニアリソースで判断します。
生成AIソリューションの40%が2027年までにマルチモーダル化すると予測されています(出典: Gartner公式プレスリリース)。動画生成AIは、その流れの中核を担う技術のひとつです。用語を整理し、モデルの現在地を掴み、自社に合う作り方を選ぶこと。この3つが、今すぐ着手できる次の一手です。
VideoNextは、研修動画・営業動画・IR動画・動画マニュアルからウェビナーに至るまで、BtoB企業における動画生成AI活用を一気通貫で支援しています。ツール選定・スクリプト設計・社内ガバナンス整備まで、個別の状況に応じて相談に応じています。
動画生成AIに関する情報は、この記事を起点にnoteで継続的に発信します。ご質問・ご相談はいつでもお問い合わせください。
相談・問い合わせはこちら